虫様筋と骨間筋

最終更新: 2019年11月12日


今回のブログの内容のまとめ。

1:手足にある虫様筋や骨間筋がセンサーの役割を持っている?

2:手の軸は中指、足の軸は人差し指にあるようだ。

3:軸が決まると回旋運動の理解も深まる。

4:実践でこの情報を生かすには?

5:セルフケアについて


手の虫様筋と骨間筋。iPad Pro App, Complete Anatomyより。編集済み。

これらの筋群は、手足の両方に存在している内在筋と呼ばれる筋肉です。体に携わる人でも、手足のスペシャリストでもない限り聞いたことがない人も多いと思います。もしくは、名前は聞いたことあっても、あまりその重要性について考えたことがない人も多いのではないかと思います。今回、IMAC手足編の準備をしている際に、もう一度機能解剖学を見直し、各筋肉の機能を改めて表にまとめていくプロセスの中で、今まで気づいていなかった面白い発見があったので紹介したいと思いますね。

簡単に予習・復習しておくと、虫様筋と名のつく筋肉は手の平と足の裏にあり、背側骨間筋も手足で名前が一緒ですが、掌側の骨間筋は掌側骨間筋、足の裏側の骨間筋は底側骨間筋と呼ばれます。手の平、足の裏ともに同じ名前だったらわかりやすいのにね。

Wikipediaの各筋肉のリンクはこちら:虫様筋背側骨間筋掌側骨間筋底側骨間筋

1:虫様筋は筋紡錘の数が多い

筋紡錘というのは、筋肉の中にあるセンサーの名称で、筋肉の長さをフィードバックする役割があります。筋紡錘の数が多いというのは、それだけセンサーの数が多いということなので、より感度が高いということですね。頭と首の付け根にある後頭下筋群は筋紡錘の数が多いので、この部位にアプローチすることで神経系に大きな影響を与えたり、リラックスさせる効果があることを聞いたことがある人はいるかも知れないですね。

虫様筋も、手足で同じような機能を持っている可能性があります。虫様筋と筋紡錘の関係の論文はこちらを参照しました。クラスで手足の筋肉にアプローチした時の反応をみていると、前腕の回内・回外や肩の可動域に変化があっただけではなく、全身にも影響がでていました。股関節の可動域が手にアプローチした時に変化していたのは、神経的なトーン(体全体の緊張度合い)が変化したことによるものでしょう。手足の虫様筋と骨間筋が、頭部の後頭下筋のような役割を持っている可能性は高いですね。手足で高機能センサーが働いて、空間や物(手)、地面(足)の情報をフィードバックしているのでしょう。

2:骨間筋の機能と手足のラインの関係

ロルファーである私は体のラインの概念はとても大切だと考えていて、重力線と交わるセンターラインと共に、四肢にも基準線が存在していると考えています。ソースポイントにおけるスティックフィギュアというテクニックでも、構造が指標にしている部分(空間?エネルギー?流れ?)が大切なのが分かります。四肢と体幹のラインに関しては、通訳と翻訳の両方で関わらせてもらっていたエド・モーピン博士の本、「重力とのダイナミックな関係性」の中でも紹介されています。


画像はエド・モーピン博士の本より抜粋

また、Johannes W. RohenのFunctional Morphologyという本の中でも成長基準線の概念が出てきます。彼は長年解剖学を教えていた医師で、ドイツ人でシュタイナーの影響も強く受けているようです。両者とも、手の指標線は中指を通っていて、足の指標線は人差し指だと説明しています。また、過去の投稿でも少し触れているようにオステオパシーでもその軸の概念は出てきます。こういった情報から、四肢の軸の位置を実際に意識していましたが、今回筋肉の機能から改めてその理解が明確になりました。

さて、実際に画像と共に筋肉の機能を見ていきましょう。それぞれの画像で、黄色い線が軸を表しています。


掌側骨間筋

右手の平の画像です。ハイライトされている筋群が掌側骨間筋ですが、中指に向かって内転するように付着していますね。


背側骨間筋

これは背側骨間筋を手の甲から見ている画像です。背側骨間筋は中指から外転するようになっています。第2・3背側骨間筋は中指を左右に動かすように付着していますね。中心線から外れる動きが外転なので、これらの筋肉も外転筋として、中指が動きの中心であることが理解できます。


底側骨間筋

足部を下から見ている画像です。足の場合、底側骨間筋は人差し指に向かって内転するようになっていますね!


背側骨間筋

足の甲からの画像。背側骨間筋は人差し指から外転するようになっています!

おー👏 (え?こんなことに興奮するのは僕ぐらい?)

これらの機能はプロメテウスなどの一般的解剖学書に載っていますね。これらの筋肉の配置から、実際に手の動きの中心線は中指で、足の中心線は人差し指だと分かります。こうして、抽象的な軸という概念が肉体のバイオメカニクスで理解できると嬉しいですね。頭の中がスッキリ!

3:軸が決定したら、回旋運動もわかる

上記のように軸の位置が確り理解できると、その周囲で起こる内旋と外旋(回内と回外)も分かってきます。基本的に手首や手の筋肉は屈筋と回内筋、伸筋と回外筋のペアで一般的には考えられます。しかし、中指を中心に動きを考えていくと、手の親指と人差し指が屈曲し、薬指と小指が伸展する動きが内旋(回内)で、外旋(回外)は逆になってきます。この考えをもとに機能を考えていくと、小指側の伸展(小指伸筋の作用など)が実は回内動作に関わっていることになりますね!つまり、伸筋だからといって、必ずしも回外作用をする訳ではないということが理解できます!!(え?これもあまり気にする人がいない???😅)

足の場合も同様に考えていけば良い訳ですが、足の軸は人差し指になるので、親指の屈曲・伸展が回内と回外に与える影響の大きさも理解できます。(注:足部の回内・回外に関しては、接地時に細かくみると、それぞれの足根骨と中足骨で回内・回外の動きが異なってきますが、ここでは複合体での足として考えています。)

なぜこれらの情報が大切かというと、この正中軸がどこかという理解が深まった上で筋肉の作用を考え、また体に触れ、動きを確認すると、今まで見落としていたものを発見することができるからです。例えば、足の母趾内転筋の機能低下で、親指の屈曲と内転作用に制限が出てくると、それは足部の内旋(回内)の制限に繋がってくるので、連鎖的に股関節の内旋制限にも影響を及ぼしてきます。これが、人差し指という指標なしに曖昧な状態で足部の回内と回外をみていると、基準が曖昧なので他の動きも全て曖昧なままになってしまうんですね。しかし、指標線が明確になると動きも確り理解できるし、それに関わる筋群の理解も深まるので、より正確に運動連鎖と代償動作も汲み取れます。

4:臨床において

では、これらの情報を知ることで、実際どのような人達の役に立つのでしょうか?

まず、クラスの参加者がシェアしてくれたこと、そして自分自身の経験でも言えることとして、手と足の感覚が確りするということがあります。これは、手を使う人にとってはとても大切なことですね!手を使わない人なんていないと思いますが、、、笑。スマホをしばらく使って、特に親指のスワイプで字をタイプした後は、中心軸から手がズレている感じがする時もあります(親指を使いすぎ、意識がいきすぎ)。そういう時にセンターにリセットできると、手の回内・回外制限も未然に防げますね。足の感覚が確りすると、足が地につく感じがまさに出て、股関節・骨盤周囲も安定します。

私たちボディーワーカーや治療家のように、手からの感覚が大切な仕事をしている人たちにとっては、情報を得るセンサーのチューニングができることになりますね。中心がずれていて、動かす本来の位置から動いていない時は、情報もそれだけ歪んで入り、出ていくということですからね。おー、怖い😂。0にセットされていない体重計に乗っていては、自分の体重がキチンとわからないですし、チューニングされていない楽器の音は気持ち悪いですね。

同じように手を使う職種という意味では、ピアノを始めとした楽器の演奏者にも凄く良いだろうと思います。元々ロルフィングはピアニストの中でも受けてくださっている人もいますが、今回改めて効果的だろうと思いました。自分の思っている感覚通りに手が動かせることは大事ですよね。野球のピッチャーなど、細かい手の技術が必要とされるアスリートにも受けてもらいたいですね。

また、ヨガのダウンワードドッグなどのように、手をつくポーズを取る時にも、手の中心が確りしてくると、肩の位置も決まってくるようになります!例えば、下の写真の女性の場合、手の中指が外に向いていますね。この場合、手から外旋方向にストレスが入っていくので、肩のところにも外旋位で力が伝わっています。それによって、内旋位でより使われる前鋸筋上部などが上手く使えていないのか、肩の屈曲に制限がでて、その分を胸郭の伸展で代償していますね。このエクササイズ自体は良いものなんですけどね。写真を拝借したリンク先では動画で紹介してくれています。


もし、これを意図的に外旋方向にストレスを入れたいから行っているのであれば、それで良いと思いますが、ニュートラルな状態でやろうと思っているのにこうなっている場合、知らないところで代償していることになるかも知れないですね。

上記のように、内旋・外旋のストレスをより的確にエクササイズなどで加えたい時には、軸を中心に回旋運動を入れていくことで、体に適切な回旋ストレスを加えることができると思います!!腕立ての時に腕を回旋させる道具もありますね。あれを使う時に中指を意識すると、より中心軸上で動かせるので、代償も少なく綺麗に筋肉もついていくと思います。

他にも考えたら色々アイデアが出て来そうですね。

5:最後に

今回軸の位置が機能解剖学的に明確になり、手と肩の関係性、足と股関節の関係性を改めてみることで、スマホなどをずっと使っていることで手が硬くなり、それが肩こりに繋がることや、靴の形状やキツさによる足の制限がいかに股関節の動きと骨盤バランスに影響を与えているかを知ることができました。

骨間筋はその名の通り骨の間にある筋肉なので、お風呂で手や足の骨の間をマッサージしてあげたり、歩いている時や自転車に乗っている時に、手の中指と足の人差し指を意識するだけでも動きが変わると思いますよ!もしろん、実際に施術を受けてもらえれば、どの筋肉のバランスが崩れていて、どの筋肉が働いていないかも分かりますけどね。この情報が色々な人の役に立てば幸いです!!

#IMAC #AthleticTraining #Rolfing #Blog

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