こんにちは。TEN代表のヒロです。
下の画像は、あるクライアントさんの可動域の制限の状態です。ちなみに、この方は腰の痛みと足の甲の違和感を訴えていました。
可動域制限
まず各部位の可動域制限を書き出していくと、
- 頚部左回旋
- 左肩水平内転内旋
- 左肩屈曲
- 右体幹屈曲
- 左体幹回旋
- 右股関節内旋
- 右下腿内旋
- 左下腿外旋
(太字は制限が特に強かった可動域)
全体からみえてくるものは?
可動域を一つ一つを見ていると気がつかないかもしれませんが、実は全体像を見ていくと、中心軸(重心の位置)が左にずれているのが分かります。黄色が本来のセンターだとしたら、赤が現状です。右下腿の内旋制限と左下腿の外旋制限は、同じ状態を表していますね。それが大腿部で出てくるケースも多いです。
もし、左の大腿部の外側が張っているから、とフォームローラーなどで外側をリリースしていても、全身が左に傾いているという根本的な部分を改善しない限り、またすぐに外側の制限が戻ってくるのは容易に想像していただけると思います。
可動域から把握できる体の状態
もう一つ、どの可動域の方が制限がかかっているかを知ることが重要です。これは可動域がより制限されている方であったり、触った時の組織の状態で分かります。例えばこのケースでは、下腿の内旋と外旋の制限それほど強くなく、右股関節内旋や頚部左回旋の制限の方が深刻でした。つまり、下腿のズレによって重心が左にいっているというよりは、右の股関節にしっかり乗れない、もしくは頭頚部自体が左にズレているから中心から左に重心がいき、下腿に影響が出ていると考えることができます。
体幹の制限は左回旋と右体幹屈曲に制限がありましたが、これもそこまできつい制限ではなく、右の股関節内旋制限が強かったので、まずはそこから改善していくと腰の痛みが消えてしまいました。これも色々な繋がりが考えられますが、今回はオーソドックスに右股関節の屈筋+内旋に関係する部位(ASISから大転子の間)の制限がとれたため、骨盤前傾位が正常位に戻り腰が楽になったのでしょう。
また、頚部左回旋の制限は胸郭との関係が深かったようで、首だけではなかなか制限が取れなかったところが、左肩の可動域からわかる胸郭左側前面の制限が改善されると胸郭の位置も変化して首の左回旋も正常になっていました。股関節と肩関節は対側(今回の場合は右股関節と左肩)で制限が出ることが多いですが、それもこういった中心軸との関係性に要因がありそうですね。
大胸筋と腰の痛みの関係?!
一つ昔の面白かった症例としては、腰の痛みが肩の水平内転の制限が取れることで取れてしまったケースがありました。なぜかと考えていくと、内旋位での水平内転の制限は大胸筋が働いていないから起こることが多いのですが、そこに制限が出ると、同じ上腕骨の内旋筋である広背筋が必要以上に働いてくるのだと予想されます。広背筋の付着部は胸腰筋膜なので、大胸筋の機能異常による広背筋の代償によって胸腰筋膜のエリアが上手く動かなくなり腰痛が出てきてしまったのでしょう。
あくまで動きというところからアプローチしていく訳ですが、問題が改善されてしまうことが多々あります。
全部全身に対してアプローチしないといけないのか?
こうやって考えていくと、一体どこからはじめたら良いのか分からなくなってきてしまうと思います。10年前の自分がそんな感じでした。繋がりはわかるし、色々な可能性は知っているけど、実際にどこが問題なのか分からないからどうしよう、という感じでした。
そこで、まずは全体をこのように把握するようにすると、体のバランスがその時にどうなっているかという理解も深まり、症状が出ている部位をやれば良いのか、それとも症状以外の部分でアプローチしなければいけない所があるのかということも分かってくるようになりました。
症状が出ている部位にまずはアプローチするケースというのは、ある一箇所の制限はすごくあるのに、他の全体にはあまりバランスの崩れが見られない場合です。先日みさせてもらった鎖骨骨折後に肩が上がらなかった方は、全体のバランスの問題というよりは、局所、つまりは肩の制限が問題でした。
これも、全体をみていく中で肩以外に制限がない、というところからそこの部分に問題があるということが把握できる訳ですね。
IMACイントロ編では、下の表の姿勢評価と可動域評価を使って体をみていきます。それを元にこうして色々考えていくと、全体の繋がりや働きがみえてきて面白いですよ!参考までにどうぞ。