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執筆者の写真Hiroki Sato, MS, ATC, CR

呼吸と螺旋


2016年も残すところ数時間となりました。

昨日でセッションは終了。その後にTENを掃除しながら、一年を振り返っていました。今年も色々な方と知り合い、色々な方にセッションをさせてもらい、色々なことを学ぶことができました。毎年そうですが、体の理解が深まって来ればくるほど、色々繋がってきて面白くなりますね。このワクワク感が毎年あるので、本当に良い仕事をさせてもらっている、と感じます。今年も良い一年でした。

さて、今は年末なのに一年を締めくくるといった感じはあまりなく、自分の頭の中は12月28、29日に参加してきた、PRIのポスチュラル・レスピレーションの情報を自分の中で統合するプロセス中で面白いことになっています。個人的には、こちらのクラスの方が去年参加したマイオキネマティック・リストレーションのクラス(昨年参加した時のブログはこちら)より手技もあるし使い勝手が良いなという印象でした。ロルファーの人達にもオススメです。

そんな状態なので年末の締めくくりといった感じではなく、あえて今頭でグルグルと統合されていっている内容をここに書き残しておきたいと思います。


PRIではまず、右側に肝臓があるのと、横隔膜の左右差から、右の肋骨が内旋、左の肋骨が外旋しやすい、つまり胸郭が左に回旋しやすいパターンがあると言っています。肋骨の内旋は呼気(呼吸を吐く)、外旋は吸気(呼吸を吸う)です。つまり、右側は吐きやすく、左側は呼吸が入りやすい、ということですね。そのパターンで右側の胸郭の筋群が常にオンになってしまっている状態をR BCと呼び、それをリセットしていくために必要な情報とテクニックをクラスでは学んでいった感じでした。PRIの多関節連鎖についてはこちら(英語)。

話は少し飛んで、12月に参加した発生学に基づくボディワークの先生であるドイツ人ロルファー、カーニーに触発されたのもあって、また最近ブレッヒシュミット(ドイツの発生学者)のバイオダイナミック的観点からの発生学を学んでいます。これについてもブログで色々紹介したい内容はあるものの、正直まだ消化できていません。ただ、面白い事として、基本的に私たち成人が持っている機能は、胚の発達・成長の段階ですでにそのメカニズムがあるという事です。発生学を学んでいくと、なぜ体がこうなっているのか分かります。例えば、心臓・肝臓に挟まれて発達していく横中隔。中心部分は心臓・肝臓に挟まれているから腱中心になり、体が成長することで引っ張られる周りが横隔膜の筋線維になるということです。呼吸に関しても、肺が代謝物を外にだすプロセスでエアウェイができてくるんですね。横隔膜の腱中心と心膜、肝臓周りの膜はもともと引っ付いているので、そうすると、私たちの体は右側に肝臓があって、左側に心臓尖がある状態での働きがもともと備わっている機能だということになりますね。

すると、代償パターンとして悪者のように扱われてしまうパターンもキチンと動いていれば、体本来のパターン、つまり体にとって一番効率的な機能として備わっているものとして考えていくことができます。胸郭の右が内旋で左が外旋の状態は、左に呼吸が入りやすい訳です。つまり、呼吸は胸郭が広がり閉じるという上下のピストン運動ではなく、吸気で螺旋状に上から見て反時計回りに胸郭から動く構造になっていると考えることができます。呼気ではその逆の動きが起こることで、呼吸で上下に体全体が捻れては戻ってという動きになるのが本来の機能なのではないでしょうか?


左側の気管支の方が外に広がり、右側の方が縦なのもこの考えと合いますね。左側の方が吸気で動きやすいから、パンプ作用で体液が戻るリンパ系の胸菅が左側にあるのかもしれません。心臓の収縮も螺旋。呼吸も螺旋。歩行も螺旋。DNAも螺旋。やはり体は全て螺旋が元になっているのかもしれないですね。螺旋、回旋の動きが起こるということは、呼吸によって胸郭から胸椎の回旋、すなわち脊柱の回旋が起こり、そこから波及して頭蓋と骨盤も呼吸によって動くことになります。良い状態になると呼吸で全身が動くのは前々から感じていましたが、より回旋で全身に伝わっていく感覚が今回のセミナーの後に感じられるようになりました。呼吸とともに上顎骨が動く感覚は面白いです。

また、呼吸を反時計回り、時計回りの両方で試してみると、感覚が全然違います。両方自由に入る状態になれば歩行で左右交互に回旋、連動して動いていく状態になるわけですね。呼吸という、歩く前の生まれた時から行う機能から発達していき、立って重力下で機能的に動いていくには、反対側の働きも上手くできるようになっていく必要が出てくるのでしょう。

本来のパターンとしてあるものが、一方向に滞ってしまい、反対方向に自由に動けなくなってしまっているのを再度取り戻していく。もしくは、もともと上手く反対方向の動きを獲得できていない状態から、確りそれができるようになるプロセスとしてロルフィングを考えていくこともできそうです。また、構造上の左右差を理解した上で、それに基づくリハビリ、そこから発展していくエクササイズなどは、ある意味必須のことなのではないかとも思います。そういった意味でPRIの左右差を明確にした上での機能解剖学を学んでいくと、体の理解が深まると共に色々なものと辻褄が合って来ます。IMACの「体を回旋可動域を中心にしてみていく」というプロセスも、的外れでない気が改めてします。

さて、こんな感じの思考プロセス、体で実験、学びを喜びとして日々過ごしている自分ですが、今回何より楽しかったのは、クラス終了後にATC10人で行った食事会でした。10年来の友人たちと一緒にああでもない、こうでもないとワイワイする時間。アメリカ時代、それも学生時代からの友人達との時間は本当に楽しい!皆それぞれが、それぞれの道で自分と向き合いながら精一杯できることをやっている。大学の現場、大学のアカデミック、プロレベル、個人で活動、それぞれ立場や仕事のあり方は違っても、お互いがお互いをリスペクトする中でディスカッションが色々でき、またお互いを高めていくことができる仲間達と素晴らしい時間を過ごすことができました。貴重な友人達の存在に感謝。学生時代からの自分達の成長と変化を振り返っていくのも楽しかったです。一年を締めくくるのに相応しい時間が過ごせて、刺激になりました。毎年こんな忘年会をやりたいものです。

さて、こんな感じのハイテンションで2016年も終わっていきます。家族、初めて息子と過ごす年末年始も楽しみです!また2017年も宜しくお願いします!!

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