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執筆者の写真Hiroki Sato, MS, ATC, CR

磁石と体

更新日:2019年12月29日

こんにちは。体を探求しているヒロです。ロルフィング®︎というボディーワーク、ソースポイントセラピーというエネルギーワークの施術を行いつつ、Integrative Movement Assessment & Conditioning(統合的動作評価と調整、IMAC)という可動域を通して体を統合的に評価し改善するシステムを考案し、共有しています。元々のバックグラウンドは、米国のアスレチックトレーナーです。


本文が長くなったので、最初にまとめておきます。結局大事な情報としては、

  1. 磁石のN極S極で、体の可動域に変化が出るようだ。

  2. 最近、経絡のような体の繋がりを可動域で評価できそうなことを観察から学び、色々探求、整理しているが、それも磁石で確認できそうだ。

  3. 体幹前面と腎経はN極で可動域が向上、体幹背面と四肢はS極で可動域が向上するようだ。

  4. 右手は人差し指と薬指がN極中指と小指がS極のような変化を促し、親指はニュートラル。左手はその逆で、人差し指と薬指がS極中指と小指がN極のような変化をするようだ。

 


なんで磁石?


磁石で色々と試してみることになったきっかけは、6月に通訳をしていた時にTom Shaver, D.O.が、昔Robert Fulford, D.O.が磁石を使っていた話をしてくれたからでした。フルフォード先生は「いのちの輝き」の著者としても有名です。パーカッションハンマー、頭蓋、エネルギー領域の知見も含めて、伝説的なオステオパスの一人です。YouTubeに動画もあります。その際トム先生は、磁石のS極を頭蓋の縫合に用いることで、手技だけではなかなか変化しない状態が変化したことを教えてくれました。


へー、と思った自分は、早速クラスが終わってからS極N極が分かる磁石を購入。貼るようにもう少し小さい磁石も買いました。今回の実験は、この小さい磁石で行っています。また、磁石と言えばピップエレキバンだよね!ということで、薬局で購入。色々な強度を買って試してみました。類似品も色々ありますね。一番多いのは200mTなようです。そんなこんなで、自分で人体実験を始めてみました。


思い返してみれば、僕がアスレチックトレーニングを学んだオレゴン州立大学の当時のヘッドアスレチックトレーナーのサンディもピップエレキバンを愛用していて、その時にも、こんなの使うんだね、と思ったのを覚えています。昔のアスレチックトレーニングルームでは、E-STIMの直流設定の際に+ーのどちら側を腫れている方に貼ると良いなどの説明書を見たことも覚えているので、電気極性や磁場・磁力が体に影響を与えるというのは、物療的にも新しい考えではないですね。Texans時代に使っていたHIVAMATもそんな感じでした。


ちなみに、磁石でピップエレキバンの極性を確認してみると、貼る側は、N極になっていました。あれ、トム先生の話と逆ですね。。。



実験開始!!




頭蓋の縫合で変化が出るなら、四肢でも変化が出るだろうと、まずは実験で磁石のS極を指先や足先に貼ってあげると、面白いことに可動域が向上したんです!逆に、N極を貼ると可動域に制限が出たんです!なにぃ〜


これは面白い!と自分で各指先でどんな可動域が変化するのか試してみると、色々と複雑に絡み合っているようで、N極で可動域に制限がでても、その制限がでた周りの可動域や対側の可動域は向上したりします。S極だと貼っているところの可動域が向上して制限がなくなり、また、周りの可動域も向上するので、だったらはじめからS極の方が良いよね、という感じでした。この観察は、主動筋を短縮させるのか、それとも可動域制限があるところをストレッチするのか、どちらが良いのかという考えにも繋がってきます。


持続性があるのかというと、貼っている間は可動域が向上するのですが、剥がしてしまうと、元に戻るケースが多かったです。しかし、必要な部位に磁石を置いて刺激が入ることで、それ以降は磁石がなくても可動域制限が取れてしまったケースもありました。いかに的確に必要な場所に磁石で刺激を入れることができるかが大切ですね。代償的なところと、原因の違いなのでしょう。その後も色々自分で試していると、貼ってから少し時間を置いてあげると体の変化が落ち着き、効果が持続する時もありました。


また、自分以外の人にも試させてもらうと、磁石により可動域制限が出ている部分は、神経筋テストを特定の筋肉に対して行った際にも抑制されていて、逆に可動域が向上していると活性されていました。磁石で制限が出ている時はブレーキがかかる感じで、動かない!という感じになります。ぜひ自分でも試してみて下さい。一つ大切なのは、ここで言っている可動域は、IMACで用いている可動域です。IMACの可動域評価が普通の可動域評価とどう違うか、またその考え方はこちらをご参照ください。もちろん、一般的可動域検査でも変化が分かるとは思いますが、あまり顕著に感じられないかも知れません。手の親指の腹側や人差し指の爪側に磁石を貼ってみて、肩の屈曲や外転(バンザイ)の動きをやってもらうと、制限が感じられるかも知れないですね。


ピップエレキバンの強度の違いでは、そんなに差は出ない印象でした。試しに一緒に購入していたネオジウムの磁石も試しましたが、磁力は強いはずなのに、変化が一定ではない感じでした。磁力そのものより、鉱物の影響もあるんでしょうか。。。磁石を選ぶ時は、一番一般的なものを使ってもらうと良いと思います。


少し脱線しますが、もう少し今回の実験での可動域とそれに関する考察を書いておきます。近年、筋膜の繋がりと経絡に何やら関係がありそうで、尚且つそれが可動域を通して確認できそうなのが臨床的に分かってきているので、今回の磁石の実験でもその繋がりの可動域がどのように変化するのか試していきました。昨年末のブログでその経緯について説明しています。


ここで神経系や一般的な機能ではなく「経絡」だったり「筋膜の繋がり」と言っている理由としては、神経的には直接関係がないような所や、筋連鎖を考えても良く分からないところにも影響が出るからです。例えば、母趾の背足側・伸筋側(肝経)にN極の磁石をおくと、大胸筋の動きである上腕骨の内旋と水平内転に制限が出ます。これは、神経的に大胸筋と母趾の運動神経・感覚神経は直接関係していないので、神経系以外の影響の可能性の方が高そうだということで、「経絡」だったり「筋膜の繋がり」と呼んでいます。ただ、筋膜層で考えた時も大胸筋は表層に属していると考えられていますが、腹部では同じ層だと考えられる外腹斜筋ではなく、より深層の腹横筋と同時に制限が出るのです。このことから、筋膜層の繋がりというのも正確ではないかも知れないです。もちろん、磁石によって神経筋反射のテストに影響が出ていて、可動域制限も出ているので、筋骨格系、神経系にも影響は出ていますけどね。ただ、神経系の繋がりや筋骨格系、筋膜層の繋がりだけでは説明しきれないような、生体磁気に反応するようなメカニクスや繋がりがあるようです。


ちなみに、筋膜と経絡の関係性は突拍子もないアイデアではなく、まだまだ研究されていく必要があることは間違いないですが、Dr. Langevineなど筋膜と鍼を研究されている人も増えてきています。今まで科学的に証明されていない経絡をはじめとした微細なものが、目新しく近年注目されている筋膜で説明できるのではないかという安直な考えがないとも言えないですけどね、、、。少なくても、これから色々なことが発見されていく領域なのは間違いないと言えると思います。



経絡と磁石


次の磁石に関する発見は、John Ross氏の「Acupuncture and the Chakra Energy System」という本をもとに、その確認作業をしていた時でした。この本では、各経絡と各メジャーチャクラとマイナーチャクラの関係性を示しています。チャクラというと何やら怪しい感じを持つ人もいるかもしれないですが、シンプルに脊柱の特定の位置、そこと対応する体の前面、神経節や内分泌系など体の重要な機能が集まっている部分だと考えてもらったら良いと思います。色とか感情、意識とか、色々面白い要素も一杯ある訳ですが、ここでは肉体レベルでの話と、検証しやすい事象だけをみていっています。


もし、IMACの経絡と可動域の関係が的確で、このRoss氏のチャクラと経絡の関係も確かならば、チャクラ上に磁石を置いたらそれに対応すると言われている経絡、そして可動域にも変化が出るはずですよね。では、その実験をしてみよう!と各チャクラが対応していると言われる経穴(ツボ)に磁石を置き、各経絡に関係すると思われる可動域を評価していきました。すると不思議なことに、体前面に可動域が向上すると思ったS極を置いてみると、対応していると言われている経絡に関係する可動域に制限が出たんです。逆に、N極にしてみると、今まで制限があった可動域が嘘みたいに取れて、綺麗に可動域が出るようになりました。あれ?指先の時と逆ですね。


なるほど。ということは、四肢はS極で可動域制限が取れるけれど、何やら体幹はN極の方が良いみたいですね。もう少し調べてみると、背中側は四肢と同様S極で可動域制限が取れるようです。この実験結果を通して、Ross氏のチャクラと経絡の関係性がかなり正確なのと、IMACの可動域評価もかなり正確に各経絡に関係しているという事が分かりました。ちなみに、Ross氏も磁石のことにこの本で触れています。



磁石を用いた療法


こうして、磁石について色々と調べていったり、実際に会った人達と共有していると、もちろんすでに今までに磁石と体の関係を色々と探求されている方々はいらっしゃる訳です。


Biomagnetism(生体磁気)やBiomagnetic Acupoint Therapy(生体磁気経穴療法)をウェブで見つけ、河野先生の筋診断とよばれる療法も鍼灸師の方に教えてもらいました。筋診断は腹診と筋肉の状態で各経絡の虚実を判断し、異常が出ている経絡の原穴または宗穴に磁石を用いてバランスを取るというものでした。Applied Kinesiologyのグッドハート氏の情報をもとに発展させていっているようなので、Muscle Activation Techniques(MAT®︎)とも大元が同じです。ということは、IMACとも相性が良い訳です。


ただ、どのシステムも経絡の状態を客観的に可動域や動きを通して評価する方法がないので、触診と感覚だけに頼らざるを得ないですね。ここがIMACの可動域でチェックできる良いところだと考えています。



原穴と磁石と可動域


原穴はこの論文によると、

1つは、五臓が病んだ時に現われる反応点、ならびに治療点として原穴を捉える見方であり、 もう1つは、十二経脈の起点として原穴を位置付ける見方である。

磁石と経絡との関係としては、この後者の見方がより関係してきそうですね。

各位置に関しては、こちらのウェブサイトで調べることができます。


上記の色々な療法の情報からヒントを得て、指先、足先だけでなく、原穴に磁石を置いていくと、より確実に可動域に変化が現れました。手足よりも確実に経絡との関係が検査できる印象です。ここでは、原穴に磁石をおくことで、対応する経絡に影響がでているという前提で話を進めていることは自覚しています。本当に経絡に関わっているのかはもう少し立証したいところですが、少し位置がズレると別の場所や繋がりに影響がでるので、それなりに信憑性はあるのではないかと思っています。少なくても、原穴と呼ばれる位置が体の繋がりでかなり影響がある部位だということは言えそうです。


原穴と可動域の関係で調べて面白かったのは、腎経以外の正経は原穴にS極を置いてあげると可動域が向上するのに対し、腎経はN極だということでした。また前述のように、体幹前面、つまり任脈上もN極で可動域が向上するようです。必ずしも虚実を確認して行っているわけではないので、場合によっては逆の時もあるかも知れませんが、基本的には男女、左右関係なくそうなっている感じです。なぜここを強調したかというと、こう言った極性を扱うワークの場合、性別で置く側や極性を変えたりすることがあるからです。少なくても、私はまだその差を観察できていません。


また、原穴と指先でどう変化するかを確認していくと、経絡の繋がりは指先もかなり正確に表していて、足母趾の腹(足の裏側)は、腎経の繋がりではなく、何やら別の繋がりなことも分かってきました。母趾の上が肝、内が脾なので、下で腎に制限がでるのかと思ったら、やはりそうではないようです。手の平でも、中指と薬指で違うところに影響がでて、中指だと心包経の原穴と同じように変化がでるけれど、薬指だと違う場所に制限がでます。そうすると、各手足の指がどうなっているのかも気になるところですよね。もちろん実験しましたが、これを全て書き出すと長くなるので、またそのうち。


この結果を踏まえて体全体を眺めていると、体の中心線、脊柱から前面、白線にかけてがN極、四肢と背面がS極で可動域に変化が起こるということで、体全体に極性がありそうな感じがしますね。体自体が大きな磁石のように極性を持っていて、正中と遠位で方向性が見えてきます。発生の際の動きと類似してるなぁ、なんて想像も膨らんでしまいます。各ミッドライン、発生学との関係も見ていくとさらに面白いのですが、これも長くなるので、これはまた別の機会にしましょう。色々知っている情報が検証できて繋がってくると面白いのです。



指の極性


さて、まだまだ思考のジャンプと、実験は続きます。極性を考え出したら、頭に浮かんでくるものにポラリティセラピーがあります。上記図もそうです。オステオパスでもあった、Randolph Stone博士が残してくれたものです。日本語版も出ていますが、英語の書物はこちらで無料で見れるので、アクセスしてみて下さい。色々と興味深い図が一杯あります。


ストーン博士の本の中に、指の極性を示している図があります。もちろん(?)、磁石に関する記述もあります。そもそも、フルフォード博士は、ストーン博士のポラリティセラピーにも精通していたようなので、その影響があったというのは想像できます。


今までもこの図は知っていたものの、確認する方法が分からないので使えていなかったというのが正直なところでした。しかし、今回の実験結果を踏まえて確認していくと、右手の人差し指はN極、中指はS極薬指はN極小指はS極という感じになっていました。親指は変化しないので、この図のように中立なのかと思います。しかし左手は逆で、人差し指・薬指はS極中指・小指はN極という関係になっていました。確認方法は、前述のRoss氏のチャクラに対応しているという位置に各指を置いて、それによってどのように対応する可動域が変化するかというのと、原穴に各指を置いた状態で可動域を確認した際にどのように変化するかという観察の結果です。磁石による可動域変化と同じ変化が、指によっても起こるのか確認していった訳ですね。


この理解の上で、原穴に適切な指を置くことで体の評価ができる訳です。例えば、脾経に関わる可動域が怪しいな、という時に脾経の原穴である太白右手の人差し指(N極)を置くとさらに制限がでて、左手の人差し指か右手の中指(S極)を置いてあげると、可動域が向上する訳ですね。本当に不思議です。


この観察を通して、触る時にどの指で触れるのかもう少し意識していくようになりましたし、自分が圧を加えなくても、磁石を置いておくように指の極性だけで少なからず体が変化するという理解も深まりました。



発展


この情報と調べ方を発見したことで、体の繋がりをさらに明確にすることができています。なぜなら、今までは臨床の中で様々な情報を確認して整理していくしかなかったものが、人為的に作りたい場所に制限を作ることができるようになったからです。また、可動域で制限があった時に、どの原穴に指か磁石を置いたら変化するか確認することで、その可動域(筋肉)と各繋がりの関係が明らかになっていくのです。体をかしてくれる方と実験したり、IMACのセミナーの際にも検証・再現していく事で、今まで以上のスピードで色々なことが明らかになっています。


呼吸との関係、経絡と可動域、可動域と五行、奇経八脈と可動域など、もの凄い勢いで色々と分かってきています。左右の関係、上下の関係、陰陽の関係なども検証していきたいですね。


脈診をできる鍼灸師の方と実験した時には、原穴に磁石をおくことで、脈も変化するのが分かりました。脈診だけだと客観性があまりないのと、経験値が高くないと的確に評価できないのが難点ですが、可動域評価や磁石があれば、脈診の確認、練習もできますね。このように他の検査方法も併せて複合的に評価していくと、もっと正確に色々なことが分かるようになりそうですよね。


磁石の影響の基礎となるこの部分を共有するだけでもこれだけの情報量になるので、全ての分かっていることをここで共有していく事が難しいのが残念ですが、このようにIMACを通して様々な体の仕組みが把握できるようになってきています。面白そう!もっと知りたいと思った方は、来年も色々な場所で開催する予定なので、ぜひご参加下さい。体全身の繋がりと色々な部位の可動域の関係を共有していきたいと考えています。スケジュールはこちらです。


もちろん、この情報をもとに経絡、筋膜、バイオメカニクスを考え、自分で可動域がどう変化するかまとめていき、体の評価方法を確立していけばIMACのセミナーに参加する必要はない訳ですけどね(笑)。


この繋がりを知ることで、エクササイズやトレーニングにも活かせます。手技療法にも活かせます。中医学で知られていることも、実際に検証でき、臨床で使うことができる訳です。日常的な体の変化を整えることにも使えます。オステオパシーや陰陽五行と合わせて考えると、機能と構造の理解も深まっていきます。磁石という固定された刺激、原穴という決まった位置を用いたら、可動域との関係の研究も比較的しやすいのではないかな、とも思って興奮する訳です。だれか、面白そうだし研究する人いないかなぁ。


皆さんも、色々実験してみて下さい!!


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