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執筆者の写真Hiroki Sato, MS, ATC, CR

人の生きた筋膜の構造

更新日:2019年11月12日



医道の日本社から出版されている、Guimberteau医師の著書、「人の生きた筋膜の構造」が手元に届きました。出張と通訳続きでなかなか中身を見れなかったのですが、やっと目を通すことができました。英語版の「Architecture of Human Living Fascia」も出版された時に購入していて、その本が手元に届いた際にも興奮しましたが、改めて今回日本語版が出版されたのはとても嬉しいです。

この本に載っている生きた筋膜の動き、「Strolling under the Skin」は、ロルフィングトレーニング中にみる機会がありました。この動画を見た時の衝撃は今でも覚えています。医道の日本社の本書のページでも、サンプル動画がみれます。


丁度、第1回国際筋膜研究学術大会が行われた2007年にロルフィングを学びはじめ、筋膜のことをもっと知りたいと色々な本や文献を読み漁っていましたが、当時は殆ど書籍から情報を得ることができませんでした。しかし、10年経った近年ではいくつもの本が出版され、また日本語の書籍も手に入るようになりました。日本でも色々なところで「筋膜」とタイトルに含まれているセミナーが開催されていますね。そんな沢山ある筋膜関係の本の中でも、「生きた筋膜」の情報を知ることができるのは本書だけです。

筋膜を静的で動きのない結合組織として考えるのと、フラクタルでカオス的システムだと考えて筋膜にアプローチしていくのでは、全くアプローチの仕方が変わってきます。私のセミナーでもこのGuimberteau先生の筋膜の動画を紹介させて頂くことが多いですが、この動画をみることで筋膜や体にアプローチしていく際の触り方の意識が変化しますね。

私個人としては、Guimberteau医師のまず疑問、仮説をもち、そしてそれを検証する観察力、探求心を読んでワクワクします。学術的な情報、検証結果ももちろん重要ですが「あとがき」が一番面白いところです。これが本当の科学だよね!と思ってしまいます。貢献者リストをみるだけでも、興奮しますね。Jean-Pierre Barral, Leon Chaitow, Serge Gracovetsky ,Thomas Myers, James Oschman, Robert Schleip、そして「まえがき」に登場するAdlabert Kapandjiには多大な影響を受けてきました。

日本語版では、筋膜系の比較的新しい用語をしっかりと日本語に訳して頂いているので勉強になります。以前IMACの紹介で英語版の本からの画像を使わせてもらいましたが、その時に脂肪層・表層筋膜と日本語で表記した層の「Hypodermis」は、「角皮下層」と訳されていました。直訳だと、hypo-(下)dermis(皮膚)で皮下なんですが、次の層も「Subcutaneous Tissue」でSub-(下、副)Cutaneous(皮膚の)で「皮下組織」と、同じ意味になってしまいます。HypodermisとSubcutaneous Tissueは同意語として考えられることも多いです。しかし、本書では二つの層でそれぞれhypodermisとsubcutaneous tissueと分けて説明しているので、適切な日本語は何になるのか探していました。


図に改めてまとめておくと、表皮、真皮、角皮下層(表層筋膜も含まれる)、皮下組織(深筋膜、筋外膜、筋周膜、筋内膜)、腱周囲の滑走システム、骨膜と骨、と層を分けて説明しています。そのほかにも、神経、血管、リンパ管の説明も詳細にわたっています。また、一番大切な、これらの層が実際に各層で別々の平な面がある訳でなく、全ての層が関わりあい、繋がっているのを実際に生きた体の写真で見せてくれています。

日本語で最新の筋膜の知見を知ることができる本書は、全ての手技療法家、ムーブメントセラピスト、そして体に携わる方々に読んでもらいたいです。

最後に、本書で解説している「筋膜」の説明を載せておきます。

筋膜は身体内部で張力がかかった連続する原線維ネットワークであり、皮膚表面から細胞核にまで広がっている。この全体的なネットワークは可動性と適応性を持ち、フラクタルで不規則であり、人体の基本的な構造体系を構成している。

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