今日は、前々から臨床で観察していたフレクションテストについての考察を紹介します。
IMACの脊柱編でもちょうど同じようなケースがありました。
クラスに参加してくださった方々の復習にもなれば幸いです。
フレクションテストについて
フレクションテストは、Standing Flexion Test(立位フレクションテスト)とSeated Flexion Test(座位フレクションテスト)として知られていることも多い整形外科的評価法です。下の動画のようにPSIS(上後腸骨棘)に指を置き、体幹を屈曲してもらいます。体幹屈曲の際に頭方に動く側の寛骨が陽性だと考えられます(そちら側に機能不全がある)。この動画の場合は右側が陽性ですね。
立位の時は仙腸関節、座位の時は骨盤が安定するので腸骨に対して仙骨が動くのを評価しているなどとも紹介されます。仙腸関節の動きvs腸仙関節の動き、みたいな感じです。個人的には、あまりピンと来ていなかったのが正直なところです。
仙腸関節の問題を鑑別する評価法として紹介されることも多いですが、私は主にどちら側の寛骨(骨盤の左右どちらか)に機能不全があるかを確認するために使っています。実際、仙腸関節の問題を診断するには、信頼性・有用性ともに低いとされています。
フレクションテストでPSISが体幹の屈曲と共に挙上してしまう原因は、仙腸関節以外にも色々あるから信頼性・有用性が低くなってしまうのでしょう。ただ、臨床的にはとても有益だというのが私の印象です。PSISの前にまず腸骨稜の高さを比べ、そこからPSISに指を置くだけで、骨盤の左右の高さとPSISの高さから寛骨の位置まで数10秒で分かります。それから左右どちらに機能不全があるかもわかるので、かれこれ10年以上使っていますが、得られる情報が多いので使わないのは勿体無いです。
立位と座位の違い
今回の発見は、立位と座位でフレクションテストを行なった時にPSISの動き方が異なるのは、実は体幹屈曲に関わる筋群の働きが股関節伸展位(立位)と屈曲位(座位)で異なるからなのではないかということでした。
というか、なんで今まで気がつかなかったんだろうか、、、。骨格の動きを評価するのも、筋肉の働きを評価するのも、同じ筋骨格系の動きなのにね。 この辺、やはり脳のバイアスというのは怖いなぁ、と思います。
座位の場合、すでに股関節が屈曲しているので、股関節屈曲筋群が体幹の前屈をする時にそれ以上短縮するのが難しい状態になります。よって、座位でPSISの動きに左右差が出る場合は、頭側に移動した側の股関節屈曲筋と体幹屈曲筋、それも腰椎下部に機能不全がある可能性が高そうです。
逆に立位の場合、股関節伸展位に近いので、より体幹の屈曲に関わる筋群、胸椎下部・腰椎上部屈曲の機能不全が分かります。股関節伸展位で伸長位にある股関節屈曲筋の機能不全は最終可動域になるまで出てこないわけですね。つまり、立位でテストして前屈を開始した時に寛骨が持ち上がる場合、腹直筋の肋骨部線維や大腰筋の胸椎・腰椎上部線維の機能不全があると考えることができそうです。
簡単にまとめると、
立位でのフレクションテストで陽性→胸椎下部及び腰椎上部の機能不全により左右差あり
座位でのフレクションテストで陽性→腰椎下部の機能不全により左右差あり
臨床的には、両方で出る場合や、立位と座位で異なる側が動く場合もあります。その理由を考えても、異なる体幹部で機能不全があると考えると、仙腸関節部だけの問題を評価していると考えるより納得いきますね。立位は陰性で座位は陽性だったら、そのまま腰椎下部もチェック。立位で陽性で座位で陰性だったら、座位で前屈している時に呼吸を含めて胸腰移行部をチェックしてあげると良いですね。胸椎、肋骨の評価はこちら。
実際のデモの例
クラスで行なったデモがこの良い例でした。
立位でのフレクションテストは右が陽性。
座位でのフレクションテストは左右対称、つまり陰性。
ということは、胸腰部になにかあるのだろう、といういうことでそのまま第12肋骨と腰椎上部肋骨突起を調べてみると、腰椎1番と2番が左回旋していました。
次に仰向けになってもらい筋テストで右大腰筋をテストすると、胸椎・腰椎上部が陽性でした(筋抑制あり)。腹直筋は陰性でした(筋機能不全なし)。
そこで、筋肉にアプローチするかわりに腰椎1番2番にアプローチして再評価してみたら、大腰筋は確り働くようになり、立位でのフレクションテストも陰性になっていました。
つまり、腰椎が左回旋していたので、右の大腰筋の方が前方位及び短縮位になっていて、そこから体幹屈曲をすると右側は寛骨を代償しないと前屈できない状態だったのでしょう。
まとめ
MMETでも、頭頚部を屈曲した時に頚椎がどちらに回旋するかで機能不全を評価していました。今回のフレクションテストも、それに近い感じですね。面上で動かないで代償が入る時は、どこかで制限がかかっているということなんでしょう。
骨格の動きや関節の評価だと思っている評価方法も、機能解剖学を考え、実際に臨床で起こることとアプローチした後にどう変化するかを観察していると、色々わかってきて面白いです。皆さんも試してみて、また何か発見があったら教えてください!
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